協働ロボットの概要:人とロボットの協働、自動化、用途

協働ロボットは、人とロボットが同じ作業空間で協力して作業を行うことを想定して設計された産業用ロボットです。製造現場や組立工程、部品の搬送、検査、梱包など、さまざまな用途で活用されています。一般的に「コボット」とも呼ばれ、人が判断や細かな調整を担当し、ロボットが繰り返し作業や一定の動作を担うことで、作業工程の自動化を支援します。

協働ロボットの基礎知識

従来の産業用ロボットは、高速で動作する装置として、作業者と物理的に隔離された空間に設置されることが多くありました。一方、協働ロボットは、力や速度の制限、センサー、制御機能などを活用し、人との接触によるリスクを低減することを目的としています。ただし、協働ロボットであれば、どのような状況でも安全に人と接触できるわけではありません。

協働ロボットという考え方が広がった背景には、多品種少量生産への対応、製造工程の柔軟性向上、作業負担の軽減、そして自動化技術の進歩があります。ロボット本体だけでなく、周辺機器、制御システム、作業環境を含めて設計することが重要です。

協働ロボットの主な構成要素

協働ロボットは、複数の機械部品と制御機能によって動作します。一般的な構成要素には、次のようなものがあります。

  • ロボットアーム:複数の関節を動かし、対象物を所定の位置へ移動させます。

  • エンドエフェクター:グリッパーや吸着装置など、対象物をつかむ、保持する、加工するといった作業を行います。

  • センサー:位置、力、トルク、周囲の状況などを検出し、動作制御に利用します。

  • 制御装置:プログラムに従ってロボットの動作や速度、停止などを管理します。

  • 操作インターフェース:作業者が動作を設定したり、プログラムを変更したりするために使用します。

これらの構成は機種や用途によって異なります。例えば、部品の搬送に使用するロボットと、精密な組立工程に使用するロボットでは、必要な把持機構や位置決め機能が異なります。

従来型産業用ロボットとの違い

従来型産業用ロボットと協働ロボットは、どちらも工場の自動化に使用されますが、設計思想や人との作業方法に違いがあります。

比較項目協働ロボット従来型産業用ロボット
主な設計目的人との協働を想定した作業高速・高精度な自動作業など
人との作業空間条件に応じて共有可能隔離された空間での運用が多い
安全対策制限機能やセンサーなどを活用防護柵や安全装置などを活用
作業変更比較的柔軟な構成が可能設備構成によって変更に時間を要する場合がある
主な用途組立、検査、搬送、梱包など溶接、塗装、重量物搬送、高速加工など

この表は一般的な傾向を示したものであり、すべての装置に当てはまるわけではありません。従来型の産業用ロボットでも、人との協働を想定した安全設計が可能な場合があります。また、協働ロボットでも用途によっては防護柵や追加の安全装置が必要です。

協働ロボットが重要とされる理由

製造業では、製品の種類や生産量の変化に対応しながら、品質や作業の安定性を維持することが求められています。人手による作業だけでは、繰り返し動作や一定の速度が必要な工程で負担が大きくなる場合があります。協働ロボットは、このような工程の一部を自動化し、人と機械の役割分担を調整するために利用されます。

協働ロボットの導入は、大規模な生産ラインだけでなく、比較的小規模な作業工程にも適用できる場合があります。ただし、導入の適否は、対象作業、設備の配置、作業時間、安全要件、必要な精度などによって変わります。

人とロボットの役割分担

人は、状況に応じた判断、例外処理、製品の状態確認、工程の調整などを担当できます。一方、ロボットは、決められた位置への部品移動、同じ手順の繰り返し、一定の条件での把持などを担当できます。

例えば、組立工程では、作業者が部品の向きや状態を確認し、協働ロボットが部品を保持したり、決められた位置へ移動させたりする構成が考えられます。このような役割分担では、人の判断能力と機械の反復動作を組み合わせることができます。

作業負担と工程の安定性

協働ロボットは、繰り返しの多い作業や、一定の姿勢を長時間維持する作業を支援する目的でも使用されます。部品の移動や位置決めを補助することで、作業者の身体的負担を軽減できる場合があります。

ただし、ロボットの導入だけで作業負担が必ず軽くなるとは限りません。作業台の高さ、ロボットの動作範囲、部品の供給方法、作業者の移動距離なども含めて工程全体を評価する必要があります。

協働ロボットの最近の動向

2024年から2026年にかけて、協働ロボットの分野では、操作の簡素化、視覚センサーとの連携、人工知能を利用した認識機能、周辺設備との統合などが注目されています。これらの技術は、対象物の位置や向きが変わる作業への対応や、工程変更時の設定作業を支援する目的で利用されています。

ただし、人工知能を利用した機能がすべての作業で同じ精度を発揮するわけではありません。照明条件、対象物の形状、周囲の環境、学習データ、システムの設定などによって動作結果が変わることがあります。

視覚センサーと人工知能の活用

カメラや画像認識システムを組み合わせることで、ロボットは部品の位置や向きを検出し、把持位置を調整できる場合があります。人工知能を活用した認識機能は、形状や配置にばらつきがある対象物を扱う工程でも研究・活用されています。

こうした機能を使用する場合には、誤認識が発生したときの動作、異常を検知する仕組み、作業者による確認方法などをあらかじめ設計することが重要です。画像認識機能だけで安全性が確保されるわけではありません。

操作とプログラミングの変化

協働ロボットでは、画面上で動作を設定する方法や、手動でアームを誘導して動作を記録する方法などが利用されています。こうした仕組みは、ロボットの専門知識が限られている現場でも、工程変更を進めやすくすることがあります。

一方、複雑な動作や複数設備との連携には、制御プログラム、安全設定、周辺機器の調整などに関する知識が必要です。操作が簡単に見える場合でも、導入後の検証や保守を省略できるわけではありません。

協働ロボットに関する法律と安全基準

協働ロボットの運用では、機械の安全性、作業者の保護、設備の設置方法などに関する法令や技術基準が関係します。適用される規則は、設置場所、作業内容、ロボットの構成、事業者の責任範囲などによって異なります。

国際的には、産業用ロボットの安全要求事項を定めたISO 10218シリーズや、ロボットシステムにおける人とロボットの協働に関連するISO/TS 15066などが参照されています。これらの規格は、安全設計、リスク評価、保護措置などを検討するための基準となります。規格への適合だけで、あらゆる設置環境における安全が自動的に確保されるわけではありません。

リスク評価と保護措置

協働ロボットの安全性は、ロボット本体の機能だけでなく、使用する工具、対象物、動作速度、作業者との距離、周辺設備などを含めて評価する必要があります。鋭利な工具や重い部品を取り扱う場合には、接触時の危険性がロボットの動力制限だけでは十分に抑えられないことがあります。

主な検討事項には、次のようなものがあります。

  • 動作範囲と作業者の位置関係

  • 衝突や挟み込みが発生する可能性

  • 非常停止や安全停止の動作

  • 工具や部品の形状、重量、温度

  • 保守作業やプログラム変更時の安全確保

国内の安全管理

日本では、労働安全衛生に関する法令や関連する技術基準が、産業用ロボットを使用する作業の安全管理に関係します。具体的な適用範囲は、ロボットの仕様、運用方法、設備の構成などによって異なります。

協働ロボットという名称だけを理由に、安全対策やリスク評価が不要になるわけではありません。設備の導入や変更に際しては、適用される法令、メーカーの技術資料、職場の安全管理手順などを確認する必要があります。

協働ロボットの活用ツールと関連資料

協働ロボットを理解し、導入計画や運用方法を検討する際には、技術資料やシミュレーションツールなどが役立ちます。これらは、作業範囲や必要な機能、安全上の課題を整理するために使用されます。

シミュレーションと動作計画

ロボットシミュレーションソフトウェアでは、ロボットアームの動作範囲、設備との干渉、作業位置などを仮想空間で確認できます。実際の設備を変更する前に動作を検討することで、配置上の問題を把握しやすくなります。

ただし、シミュレーションの結果が実際の設備環境を完全に再現するとは限りません。実機での動作確認や安全検証は、別途必要となる場合があります。

技術資料と安全関連情報

参考資料として、次のような情報源があります。

  • ISOの公式ウェブサイト:産業用ロボットや機械安全に関する規格情報を確認できます。

  • 国際ロボット連盟(IFR):産業用ロボットの利用動向や業界に関する情報を公開しています。

  • ロボットメーカーの技術資料:可搬重量、動作範囲、設置条件、制御機能などを確認できます。

  • 公的な労働安全関連機関の資料:機械設備のリスク評価や職場の安全管理に関する情報を参照できます。

よくある質問

協働ロボットとは何ですか?

協働ロボットとは、人と同じ作業空間で協力して作業することを想定した産業用ロボットです。センサーや制御機能などを利用しますが、安全な運用には設備全体のリスク評価が必要です。

協働ロボットはどのような用途に使われますか?

主な用途には、部品の組立、ピックアンドプレース、検査、梱包、ねじ締め、機械への部品供給などがあります。適用できる作業は、必要な精度、部品の重量、工具、作業環境によって異なります。

協働ロボットと従来型産業用ロボットの違いは何ですか?

協働ロボットは、人との協働を想定した安全機能や運用方法を備えることが特徴です。従来型産業用ロボットは、高速動作や大きな可搬重量を必要とする工程などで使用されることが多くあります。ただし、両者の違いは機種やシステム構成によって変わります。

協働ロボットに防護柵は必要ですか?

必ずしもすべての設備で同じ対応になるわけではありません。ロボット本体、工具、対象物、動作条件、作業環境などを評価した結果によっては、防護柵や追加の安全装置が必要になります。

協働ロボットの導入では何を確認しますか?

対象作業、可搬重量、動作範囲、必要な精度、周辺設備との連携、安全対策、保守方法などを確認します。導入後の作業手順や作業者への教育も、運用計画の重要な要素です。